はぴねすくるー

恋愛も、家族も、仕事も。全部楽しみたい人の為の欲張りな生き方推進委員会。

僕ではない僕の存在

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僕は僕に与えられた全ての時間を僕として生きていない。

それでも僕が生きていられるのは、奴らの存在があるからだ。

 

 

人生の大半の時間、僕は僕の中の奥の方にある洞窟にいて、季節など関係なく眠って暮らしている。

 

突然ふっと我に返る時は、僕は何かの衝撃で突如起こされているから事態を把握するのに少し時間がかかってしまい、瞬間的ではあるが体も何故か静止してしまう。

それはジリジリと鳴り続ける目覚まし時計の音だったり、カーテンの隙間から徐々に入り込む朝日だったり、地震のような大きな揺れだったり、奴らが窮地に追い込まれて駆け込んでくる足音だったり。様々だ。

 

 

その一瞬のあいだに僕は周りを見渡し、僕の記憶ではないような過去の映像を再放送し、頭の中を時系列ごとに細かく整理して、やっと安堵のため息をつく。

それでもって、やっと僕はすべてを掌握し、僕自身の主導権を握るのだ。

 

 

 

 

僕の中の奴らはよく僕の存在を忘れる。

相当な目立ちたがり屋しかいないのか、それとも僕という主の存在をそこまで重要視していないのか。

そんなことは奴らにしか分からないことだが。

 

「我を忘れる」なんていうけれども、本当にその通りで僕はよく忘れられて、あまり起こされることもなく寝過ごしてしまうか、起きていても洞窟の中でその喧騒を見守っていることが多い。

たまに何となく司令塔っぽく指示を出してみたりもするのだけれども、そんな策士ごっこに付き合ってくれるかどうかは基本的には奴らの気分次第なわけで。

まぁ普通の日常生活くらいは奴らに任せておけば上手くやってくれるようだった。

 

 

 

 

 

奴らはそれぞれの役割を持っていて、僕自身なんかよりも自分の長けている部分を理解しそれを使う術も技術も持っている。

 

そんなだからこそ、通常時は僕が出ていくよりも奴らが話し合って交代しながら操縦する方がきっと上手くいくのだと思っている。

 

ただ奴らには最終的な重要案件の決定権はない。それだけは僕自身しか持ちえない。

だからそんな最終局面の勝負所では、僕がその舵を切り、奴らに指示を出す。

先程は策士と言ったが、あれはごっこの話であって、実際は将軍といった役割とも言えようか。

 

 

 

僕の頭の中は常に誰かが言葉を発しており、それは1人だけであるようなことは稀だ。

奴らは皆、本当に口数が多い。

雄弁とか、饒舌と言えば聞こえはいいが、僕自身は五月蠅いとか騒々しいとかの方がしっくりくる表現ではないかと、寝た振りをしたままの状態で内心思っている。

たまには静かに休ませてほしいのだが、自己顕示欲が強い奴らにそんなことを言ったところで暖簾と相撲をとるようなものだ。

ましてや僕は奴らのおかげで大半の時間を洞窟の中で自由気ままに過ごせるわけであるから、まぁそんなことは目を瞑り心の中にしまっているわけである。

 

 

僕がたまに外にいる誰かに話すわけでもなく宙に言葉を発してしまうのは、奴らの会話に入ろうとした時に誤ってその発言を外に漏らしてしまうことに要因がある。

 

そんな失態をよく起こして奴らに笑われている。主となる僕自身に威厳がないせいか、奴らには僕に対する尊敬の意などは全くないようである。

 

そんな奴らを横目に、僕は外にむけてその失態を誤魔化し、奴らの存在など知らない周囲の人間に自ら愛想を振りまくのだ。

 

 

 

 

僕ではない存在に関して、どういう認識なのかなんて聞かれることはないだろうけど、もし聞いてくるような少し変わった人が現れた場合、僕は即こう答えるだろう。

 

 

『普通に生きていくにはきっといらない存在だと思う。だけれども今の僕にとっては必要不可欠なな存在なんだ。』

 

 

僕の中にいつからか借りぐらしをしている奴らの存在は、きっと僕が生きていくために作り上げた僕だけにしか見えない特別な存在である。

 

友達でもない。恋人でもない。

僕自身であり、僕自身ではない。

 

僕だけでは受け止めきれない全てを分配して受け止めてくれ、僕だけでは思考できない全てを考えてくれ、僕がどうしたらいいのか迷ってしまった時に背中を押してくれる。

 

僕は奴らと共にあることで、僕は僕のまま、僕を保っていられるのだと思う。

 

 

できることなら僕だけで全ての時間を独占して満喫する方がいいのだろうけど。

 

敏感すぎるほどの感受性と自由奔放すぎる絶え間ない欲求を持ち合わせて生まれ、不感症にならずにこの世界を生きていきたいと望む場合、今僕の器ではこうするしかなかったのだと思う。

 

 

だから今、僕が僕でいるためだけに存在してくれている奴らに僕は本当に感謝している。

 

ただ、いつか、奴らの存在なしに僕が僕でいられる器を持ち合わせた時、僕はまた一段と違う僕になれるのだろう。

 

そんなことを黄昏ながら想いつつ、今日も僕は奴らと奥の洞窟の中で奴らとの会話に興じている。

 

手放せず必要としながら。いつかさよならできることを望みながら。