さおたむの激情派劇場

道なき茨道を超絶幸せに爆走する生き様を。

重なる鼓動の後ろ側

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その大きな背中にそっと寄り添い頬をあてる。少しだけ早い振動が届く。

この音はどちらのものなのか、実際には分からない。

けれど頬を伝わるこの暖かい体温だけは紛れもなく自分のものではないと思うと、そんな些細なことがとても幸せでその時間が終わらなければいいななんてことを思う。

重なり合う音。混じり合う体温。

気恥ずかしくなって体勢を変えたものの、しばらくすると恋しくなって背中合わせになった。

 


いつかはきっと終わる。

終わらないことなんてない。

それがいつかは分からないけれども、必ず終わりは訪れる。

それは寂しいけれども、終わりがあるからこそそんな些細な触れ合いすら至福の時間だと感じることができるのかもしれない。

そんなことを1人思う。

 


目を覚ました時、君はどんな顔をしていて、その眼差しに移り込む僕はどんな表情をしているんだろう。

距離はこんなにも近いのに、どうして背中合わせだとこんなにも遠くに感じるのだろうか。

どうして君の寝息が止まるまでの時間はこんなにも長く永遠のように感じるのだろう。

 


恋心は言葉を交わさないこういう時間に育まれていくのだなとふいになんだかおセンチに、でも他人事のように、浮かんだ言葉が流れていく。

 


寝返りをうったきみは空を見上げていたから、無性に遠くにいかないでほしいと思って、無意識に空との狭間に入り覗き込んでみると幸せな夢の世界にいるようだったから、安堵と寂しさが襲ってきて僕はまた背中を向けた。

 


きっとこれは正しい選択だったと思う。

あのまま君を見つめていたら、その夢の中に入り込んでしまいたいという欲求を止められなかっただろうから。

 


その体温が伝わるたび、君の声が僕の鼓動を揺らすたび、僕は何度も何度もあぁやっぱりって思ってしまって、けれども僕だけが君を欲してるのを知られたくなくて、溢れ出しそうな言葉をのみこんで、何もないその空間に向かって僕はわらった。

 


起きたら体はむくんで重たかった。

低反発のマットレスはその重さの分だけ沈んでいた。

昨日飲みすぎたせいか、少しだけ頭がぼうっとする午前中。

カーテンから差し込む光は眩しかった。

その光の中でもきみは深い眠りから覚めることはない。

 


君は僕のものではないし僕は君のものではない。

曖昧な関係にどれほどの想いがあるのか、なんの意味があるのかなんて推し量ることはできないけれども、それと同様に誰かが作った形や言葉も2人のあいだでは無意味に等しいのかもしれない。

 


僕が君を独占するこのシングルベッドでの静かな時間は、僕と君が離れてしまったとしても、僕の記憶から消えることはないのだと思うとそれだけでもう幸せだった。

 


未来のことに想いを馳せるより、現状の形や名前に囚われるより、いつ終わるか分からないこの幸せを噛み締めている方がよっぽど利口なように感じる。

 


そう思いながらも一抹の不安と寂しさが拭えないのは僕もまた、そんな名前に囚われしものであることの証明なのかもしれない。

 


言葉にできないのではない。しないのだ。

きっと僕らのような不器用な人間には、その奥底の感情を伝えるのに言葉は少し役不足かもしれないから。

 


届いてほしいけれども届いてほしくない想い。

それを伝えるのは静かに響き渡る2つの心音だった。

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