さおたむの激情派劇場

道なき茨道を超絶幸せに爆走する生き様を。

寒空の朝に。

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ドアを開けると、空はもう明るくなっていた。

街はせわしなく仕事に行く車や人であふれるいつも通りの光景が広がる。

 

その中で冷たい風を感じながら、酔いが回った少し思い通りにいかない体を自分の体温で温め歩く時、何だかいつもは歯止めの聞いていた奥底の感情がマグマのようにあふれ出してくる。

この世界に置いて行かれるような焦燥感とどこからともなく襲ってくる切なさで名前のつけられない理由も分からない涙が静かに流れ、それをぬぐいながらとぼとぼと空を見上げる。

 

けれど、私はこの時間をなぜだか嫌いになることはできない。

まっすぐにタクシーで帰って何も考えることなく寝れば、味わわなくていい感情なのかもしれないが、それでもこの10分足らずの哀しすぎる時間を愛おしく抱きしめずにはいられないのだ。

 

これは一方通行の恋心に似ているのかもしれない。

 

 

***

 

事実なんてわかりきったことだ。

 

君にとっての僕はただの通りすがりの無意識に二度見してしまった昔好きだったあの子に似た他人のようなもので、溢れてしまったその好意に意味付けするなんて考えることもないのだろう。

 

ただ、僕ばそんな哀しい事実からは目を背け続けて笑う。

君の目に映る僕はせめて自分史上最高でいたいという僕のエゴだ。

 

君が僕を見ていないことも重々頭では分かっているのだけれども、きっとこの先も僕を恋愛というフィルターを通してみてくれることはないことも何となく予想はついているのだけれども、それでも一抹の望みに心を委ねずにはいられない。

 

そんな思考力の乏しい感情を人は恋心と呼ぶのだろう。

 

 

君の前ではその希望を抱いてしまったがためにできてしまう小さなささくれの痛みを静かにかみしめながら、それを悟られないようにわざとのように明るく振る舞う。

 

感じた痛みや悲しみは消えることなく、心のどこかに少しずつ積もっていく。

思い出させてくるのはいつもアルコールに支配された頭が冷たい風で冷やされてしまった瞬間だ。

どこにも吐きだすことのできなかった、届くことのない言葉達はそんな朝に目からこぼれて初めて形となって昇華されていくのだ。

 

だからこそ、この短い時間が僕にとっては欠かせないものであるのだろう。

 

 

***

 

僕だってそんなにいつも強くいれるわけではない。

いつも笑っていられるような図太い神経は持ち合わせていない。

どちらかというと誰よりも単純でまっすぐなのに、誰よりも複雑に絡み合っている繊細な性格だし、今感じているこの感情が本当に愛なのかと言われたら、それを即答で断言できるような年齢でもない。

 

だからこそその悩みが君へ向かう足を止めてしまう。

 

勢いだけで君に好きだと言えたらどれだけ幸せだろうと思う日もあるけれども、何度頭の中で繰り返してもその言葉を受けた君はいつも変わらずさみしそうに困った顔をするのだ。

 

いろいろ考えた後、やはり君のそんな顔は見たくなくて、僕はこの風に全てを委ねて明るい空の下、一人さみしく小さく笑う。

 

君が笑っている、あの大好きな笑顔が近くで見れればそれでいい。

 

そんなことを自分に言い聞かせながら。

 

君のぬくもりを感じながら、その明るすぎる朝の街を歩ける日を望む心を奥底に眠らせながら。

 

 

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